200505-日本政府の財政再建の必要性について
Q
- 財政再建は必要だと思いますか?
- どんなことをしたら黒字になると思いますか?
Ans
政府が黒字になるのは、経済学的に不可能
政府が黒字になるのは、不可能です。 基本、政府は赤字であり、その借金は、インフレにより返すことが前提です。
1990年ぐらいまでは、経済が成長し、インフレでしたので、借金しても返すことができました。
が、低成長になった後は、インフレ率が下がり、1998年くらいからはデフレです。より、借金は返せなくなり、積み上がっています。
これは、経済学的にも正しい事象です。
日本の国内で、経済活動を行っているのは、企業と家計と政府の3つですが、
経済学では、 ①企業の黒字(or赤字) ②家計の黒字(or赤字) ③政府の黒字(or赤字) で、 ①+②+③+外国との貿易での赤字と黒字=ゼロ という恒等式が成立します。
1998年以降 民間(企業+家計)が黒字 なため、政府が赤字で、全体を足すとゼロとなります。
バブルの頃に、企業が借金をしまくり、土地などを買ったため、政府が黒字になったことがあったのですが、それはバブルが起こした例外的事象です。
つまり、企業が黒字を目指し、家計が生涯の中で黒字を目指しているので、政府は赤字になります。
家計の場合は、子育て世代が多いと、マイホームなどを買うためにローンなどを借りるため、その家庭が赤字になりますが、今は、高齢者が老後資金を使わず貯めているので、全体として黒字です。
ちなみに、 政府の赤字は、国債という借金でまかなっています。が、その国債を買っているのは、日本にある銀行であり、つまりは、企業です。
政府の赤字は、企業の黒字であり、政府にお金を貸しているのは、企業とその後ろにいる家計です。
よく政府の借金が1100兆円あるといいますが、それだけ、企業は政府にお金を貸しており、それは、家計の預金という形態で、統計上は現れます。
つまり、家計は、国民一人あたり平均900万円分の資産を、政府の借金証文としてもっています。国民は金持ちですね。
この国民の政府の借金の証文ですが、国民が寿命を迎えて、子孫がいないと、国家に返納されるので、200年後には、政府の借金は、国庫に返納される借金の証文でチャラになります。
Q : なぜ、政府は借金をして、企業に発注しているのですか?
Ans: 経済を安定させるために、政府はGDPを支えている
企業は、利益を上げることを前提に活動しています。企業が利益を上げるためには、経済成長していることが前提となります。
現在、経済が低成長のため、企業が利益をあげにくい状態です。
経済がマイナス成長になると、企業は、銀行から借りたお金を返せなくなります。
銀行は、例えば、利子2%でお金を貸します。企業は、借りたお金でものを生産して、2%増しして、銀行にお金を返します。
企業が、ものを生産する際に、2%増しにするというのは、経済が成長するということと同等です。
で、経済が成長していないと、本来は、企業は2%増しの生産ができないのです。
が、政府は、企業が2%増しの生産ができるように、 政府が借金をして、企業に2%増しになるように、注文をだして、生産をしてもらっています。
つまり、政府が、企業が赤字にならないように支えているのです。
そうです。 企業が赤字になると、企業が借金を返せないなで、倒産するなどの事象になり、最終的に、社会が不安定になります。
政府はそれを避けるために、借金をして、GDPを支えているのです。
政府がGDPを支えないという政策もある
ちなみに、政府がGDPを支えず、企業などの経済活動の自由に任せるという考えもあります。新自由主義と言われ、アメリカ、イギリスで採用されています。小泉政権下でも導入されました。小さな政府などと言われます。
ただ、日本の場合は、小泉政権以降、小さな政府に徹しきれず、今は、中途半端な小さな政府で運用しており、政府がGDPを支えています。
ただ、政府がGDPを支えると、政府が恣意的に、お金を使うため、利権などを生みやすいのです。
北欧などは、大きな政府と言われています。
どっちの政策がいいかは不明です。
新自由主義が、正しい政策であるか
ついでに 新自由主義は、企業が、強欲に利益に向けて活動し、資本を投資するということが前提です。 で、アメリカでは、資本が投資されてそれが利益を生むということが、経済において重要視されています。
資本が投資されて利益を生むには、①市場が成長しているか、②市場が拡大しているかのどちらかです。
アメリカは、成長市場の囲い込みと、市場のグローバル化を推進して、グローバルに市場を独占するという戦略で、新自由主義を作り上げました。
日本は、資本が投資されず、企業内で内部留保されています。で、アメリカ、中国の資本に遅れをとり、現状は、成長できていない状況です。
本来であれば、企業は、借金をして、先行投資することで、新たな市場を確保することが求められるのです。
が、現在の日本では、企業は、借金をせずに、内部留保して、資本を投資しなていない状況です。この企業が借金をしないことを、無借金経営といいますが、本来の新自由主義には、そぐわない企業活動です。
まぁ、政府が企業の代わりに、借金をして、GDPを支えないで、経済の自由な活動に任せるべきなのかもしれません。
そうすると、企業は、生き残りをかけて、活性化するかもしれないのです。
ただ、日本では、高齢者が変化を嫌い、その支持をもって、政権が成立しているので、新自由主義的政策が取れないのです。
Ans. 政府が赤字国債を発行しないようにするには
つまり、財政を再建するとは、新自由主義に徹するということです。
政府はもともと借金などする必要はなく、経済主体である企業と家計の自由にまかせて、
金利操作だけに徹すればいいのです。
しかし、政府は、企業が赤字になって倒産し、淘汰されるのを防ぐために、国債を発行して救っています。
小泉政権の頃は、そのような企業をゾンビと呼び、淘汰されるべきで、それにより、新たな成長市場に働き手が移動することで、市場が活性化されると言われました。
ただ、ゾンビな企業を潰すという政策は、難しく、実行されませんでした。
コロナで経済活動が停滞していますが、例えば、このような状況で、政府が出費を絞ると、いくつかのゾンビ企業が倒産します。が、それをしない政策を国民は選びます。
財政再建とは、GDPを政府が支えるのをやめて、国債発行をやめ、ゾンビな企業を潰すことで可能になります。
新自由主義の経済政策は、見直される
新自由主義は、経済政策的には、採用している国は少ない、特別な思想といえます。
もともとの資本主義は、自由経済で、企業と家計の自由にまかせて運営されてました。が、それが、資本家による資本の独占や、保護主義などを生み、世界恐慌、世界大戦を生みました。
より、戦後は、修正資本主義が採用されました。企業の自由に任せるのではなく、一部、政府がコントロールするという考えです。
戦争からの復興時期に、人口増加と科学技術の発達を伴い、自由貿易が推進され、先進国では、経済が高度に成長しました。しばらくの間、修正資本主義でうまくいってました。
が、アメリカ、イギリス等で、1980年代に、経済停滞があり、経済資源を効率的に利用するには、市場に任せるべきという視点に立ち戻るべきというものです。
このような考えを、新自由主義と言います。(いろいろな言説があるので、正しくは自分で調べてみてください)
自由な市場とは
市場には、製品市場(+材料市場+サービス市場)、金融市場、労働市場があります。Product/Material/Service、Money、Manで、まずは、Product/Materialで、グローバルに市場が開かれました。その後、Money、Serviceがグローバルに市場が開放されました。で、今は、Manがグローバルに市場を開放できずにいます。
すべての市場がグローバルになれば、新自由主義は、正しく機能します。
が、Man(労働市場)は、新自由主義が採用する供給と需要が、供給量と需要量により最適に均衡するという理論にそぐわないため、その部分で、新自由主義は歪みが生じます。
モノとカネは、グローバルに移動しても、問題無いが、ヒトは、土着の場所があり、そう簡単には移動できないです。また、ヒトは、需要されるレベルと、供給されるレベルとの間に、量、質ともに、最適に均衡することが難しいのです。
つまり、ある産業が不要になったとしても、ヒトがその状況に対応して、住む場所を変えたり、知識や技術を変えたりするのは、困難で、失業などの状況が発生します。
政府は、社会の安定のために、活動しているので、そのようなヒトが、グローバルな視点での需要供給に、迅速に対応できない状況に対処しなくてはならないのです。
新自由主義は、見直されてます。トランプ政権では、アメリカ・ファーストになり、移民の制限や、保護主義的な政策を取るようになりました。イギリスも、移民対策で、EUより離脱しました。
新自由主義は、壮大な社会実験の一つで、これから、大きく修正されていくと考えられます。
で、日本ですが、 新自由主義の考え方は、株主資本主義、利益至上主義であり、3方良しという思想の江戸時代の頃の日本経済と考え方がそぐわないのです。
新自由主義は、市場の変化(好況・不況)に対して労働市場がフレキシブルに対応できないと、成立しません。日本は、そのような労働市場ではないのです。徐々に変わっていくと考えられますが、今でも、年功序列とか終身雇用などの時代遅れの言葉があり、労働者の一部は、それを提供するのが、企業の役割と考えています。
まぁ、終身雇用などは、明治・大正時代にはなかったので、昭和の時代のあだ花な言葉です。
日本においても、資本効率を高めるために、株式市場の活性化を施す施策や、労働市場を自由化するための法律が作られていますが、徹底されていないため、中途半端な新自由主義の施策であり、経済を活性化できていません。
まぁ、如何に、ゾンビな企業に市場から退却いただき、それで発生する失業者を、どう労働市場で吸収するかが課題で、それができないと、財政再建はできないかなと、感じます。
(私見です)
Ans. 財政再建は不要
ちなみに、財政再建は、必要か不要かですが、不要です。
今の経済の仕組みでは、政府がした借金は、インフレにならない限り、返すことはできません。
インフレは、経済成長率と同等レベルにしか、インフレになりません。 先進国の状況を見ると、今後の経済成長率は、2%が限度で、それ以上にはなりません。
この程度のインフレ率だと、政府は借金を返せませんので、基本、今までした国債の返却は、借り換えするしかないのです。前述しましたが、200年後には、返却可能です。
で、財政再建として、 毎年の予算を策定時に、赤字国債の発行を減らすのがターゲットになります。
これは、政府が、GDPを支えるのをやめるしか無いのです。が、GDPを低成長にすることに、経済学的な答えがなく、GDPを支え続けています。
なぜ、経済学が、経済成長を是としているのかは、以下の理由です。
今の経済は、政府が貨幣を発行する量以上に、銀行機能が発行する貨幣(信用貨幣)の方が多い。
信用貨幣は、発行すると、利子分の増加が必要な貨幣です。利子分の増加とは、つまり、経済が成長するという前提です。
つまり、経済が成長しないと、この信用貨幣の制度が破綻します。
信用貨幣制度は、長い間の貨幣の歴史の中で構築された制度で、これに変わる制度に、変更することは、現状、不可能なのです。
で、政府は、GDPを支えるために借金を続けます。
======== 追記、ちなみに、 中東やインドのように、銀行機能でお金を貸し出す際に、無利子・無担保にするという案もあります。
が、これは、銀行家が許さないので、政府は、そのような政策はできません。
銀行家は、利子を取ることで、継続的な利益を上げる仕組みを構築しており、その仕組みを排除するのは、世界的に、不可能なのです。