2101-デフレ脱却するには

Q :

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Ans :

デフレとは、市場の財・サービスの潜在供給量が、実際の需要量よりも大きいために、供給量>需要量で、バランスが、価格が下がる方向になる事象です。

対策としては、以下の3つ。

①供給力を減らす ②需要量を増やす ③市中の貨幣量を増やす

③の「市中の貨幣量を増やす」は、金融政策で行います。

アベノミクスでは、異次元量的緩和などの政策が行われました。 より、アベノミクスの後半では、デフレは解消の方向でした。が、実際は、想定したレベルでのデフレ脱却に至っていません。

金融政策は、中央銀行が行います。中央銀行は、市中の物価の安定を目指すための政府機関です。市中の物価が、2%インフレであるのが、経済学的に良い状態とされています。

より、アベノミクス以前は、金融政策は、限定的とされていたが、アベノミクスでは、量的緩和、質的緩和で、日銀当座預金のゼロ金利ーマイナス金利、民間銀行が保有する国債の日銀買い取り等が行われました。

が、中央銀行は、市中に直接的におカネを増やす施策が、法律上、行えないのです。より、間接的に、市中をおカネが回るように施策しています。

市中のおカネは、民間銀行が、市中の経済主体(民間企業、民間個人)におカネを貸し出すことで増えます。市中の経済主体がおカネを返すと、市中のおカネは減ります。

2%インフレを引き起こすには、民間銀行が、市中のおカネを増やすことが必要で、そのためには、市中の経済主体がおカネを借りて使う必要があります。

が、経済が不況(経済活動が活発でない)の場合、民間企業は、民間銀行からおカネを借りて、設備投資などに使っても、その分の売上アップ、利益向上ができないため、おカネを借りない状況です。また、民間個人も、高齢化等の影響で、住宅ローン等を借りるヒトが減り、デフレ配下のため、おカネを借りてまで、消費を増やす傾向にありません。

つまり、市中の経済主体がおカネを借りないため、いくら中央銀行量的緩和で市中のおカネを借りやすくしても、借り手がなく、2%インフレを起こすことはできませんでした。

そういった意味で、アベノミクスは、当初の目標を達成できずに終わりました。

アベノミクスも後期からは、③の金融政策だけでは、うまく行かないことが、実証され、主流派経済学的には、金融政策と財政政策の合わせ技で、経済を活性化していくべきと、共通的な見解になっています。

財政政策とは、「②需要量を増やす」政策です。

市中の経済主体(民間企業、民間個人)が借金を増やさないために、市中のおカネが増えないのであれば、もう1つの市中の経済主体である政府が、民間銀行からおカネを借りて、使うということです。これを財政出動と言います。

市中のおカネが増えない原因は、民間企業が借金をしないためですが、政府が代わりに民間銀行から借金をして、民間企業の財・サービスを消費することで、消費量(=需要量)を増やします。そうすると、民間企業は、増えた消費に対応するために、設備などを強化するために、民間銀行から借金をするようになるため、市中のおカネが増えるというストーリです。

この財政出動は、ケインズ政策といい、1970年代に行われていました。が、1970年代後半から1980年代に、うまく機能しなくなり、スタフグレーションという事象が起きました。

政府の財政支出は、恣意的に行われ、それが既得権益を生み、経済効率が悪くなると批判されました。また、金融がグローバル化するに伴い、政府の財政支出は、経済全体への波及効果が低くなると理論だてされ、ケインズ政策は否定されました。

ただ、日本の失われた30年やリーマンショックを経て、現在は、主流派経済学も、ケインズ政策を、是としています。より、新型コロナ配下で、各国が、財政出動の大盤振る舞いをしています。

つまり、デフレ対策とは、アベノミクスの金融政策と、ケインズ政策財政出動の合わせ技を行うということです。

ただ、1970年代に、ケインズ政策が起こしたデメリットを是正する政策がまだ、不明確であり、財務省などは、財政出動には消極的です。

1998年からデフレで、一時期、財政出動に前向きでしたが、小泉政権が、プライマリバランスに言及するなどし、財政出動には後ろ向きな状況です。とはいえ、GDPをマイナスには、できないため、毎年、財務省は、GDPがマイナスにならないように、30~40兆円の赤字国債を発行して、GDPを補填してきました。

が、その赤字国債は、デフレ配下では返済することができないため、現在は、1000兆円超の赤字国債が積みあがっています。

この赤字国債残高を問題視する「昔の経済学」の方が、多いため、プライマリバランス、緊縮財政がいまだに、幅を利かせています。

とはいえ、現在の主流派経済学では、デフレ脱却には、金融政策と財政政策の両輪で、対処せざるおえないのは、明確であり、アベノミクスの失敗を繰り返さないためにも、すがのミクスでは、両輪を回して対処してほしいものです。

「②需要量を増やす」対策ですが、上記は、政府が出動して、企業に発注することで、需要量を増やすという議論でした。ただ、この方法は、ケインズ的であり、1970年代に発生した問題に対する解決案も難しいです。

で、本来は、「②需要量を増やす」対策は、国内消費の6割を占める「民間個人」(家計)に対して行うべきです。

現在の日本は、65歳以上の家計が40%?を占めています。65歳以上の家計は、年金をベースに生活をしており、貯蓄を切り崩して、生活しています。そのため、消費を活性化しにくい対象です。

65歳以上の家計の消費を促進するには、以下のような政策が考えられます。 1)相続税を高率にする 2)生前贈与などを促進する

で、その他の家計で、特に、20歳から子育て世代(~50歳まで)は、収入の8割から7割を消費する傾向があります。より、この世代の消費を活性化することがポイントになります。 この世代の消費を活性化するには、簡単な話で、「給料を増やす」につきます。アベノミクスでも、企業に対して、給与を上げるように、依頼をしました。が、企業は、経営判断として、給与を上げませんでした。企業は、コスト競争の中で、利益を確保するために、運営しており、基本、人件費は削減する方向です。ただ、今後、労働人口の減少により、人手不足が想定され、徐々に、人件費が増えていく方向になると想定されます。

消費を活性化する政策としては、新型コロナ対策で実施された定額給付金、GoToキャンペーン等が想定されます。

定額給付などは、その効果を鑑み、今後も、実行される可能性があります。

で、最後に、「①供給力を減らす」政策ですが、これは、今まで行われてきませんでした。供給量と需要量にギャップがあっても、供給量を減らすのは、市場による自然淘汰にまかせていました。

経済の成長段階により、市中の需要が変化していきます。その需要の変化にあわせて、供給体制も本来、変化していくべきです。

1998年よりのデフレで、供給量と需要量のギャップが発生していましたが、政府は対策を打っていません。で、毎年30兆円の赤字国債を発行してこの受給ギャップを埋めてきました。

ケインズ政策のデメリットとして、政府の支出が恣意的になり、既得権益の売上・利益に、財政出動が充てられ、経済資源が非効率に利用されるというのがあります。

政府が恣意的に財政出動すると、本来、市場から淘汰されるべき産業分野の企業が、淘汰されずに生きながらえるということになります。

新型コロナ下でも、持続化給付金、旅行業へのGoTo等で、本来、淘汰されるべき産業分野の企業の存命に財政が使われています。新型コロナがおさまる3年間の間を、徐々にソフトランディングさせようという施策とは思われますが、・・・・まぁ、ケインズ政策の悪い例と言えます。

============== ちなみに、赤字国債の残高は、積みあがっていますが、これは、インフレにならない限り返せません。より、政府は、借り換えていくことになります。借り換えるというのは、借金を返すのに、新たに借金をして返すことです。

政府は、死ぬことがないので、いつまでも、いくらでも借り換えることができます。ただ、政府は、必ず返してくれるという信用があることが前提です。基本、政府は、税金を取ることができるし、政府関連機関である中央銀行がおカネを発行していますので、返せなくなることは、論理上、ありません。

政府は、国民がいる限り、日本円を、国債で調達して、財政出動することが可能です。 前述したように、政府の支出は、民間企業の財・サービスを購入するために使われますので、そのおカネは、民間企業に支払われ、めぐりめぐって、民間個人の金融資産として蓄積されます。

政府の赤字国債残高は、そのまま、民間個人の金融資産残高となります。民間個人の金融資産の80%は、65歳以上の個人が保有しており、この金融資産を、相続する際に、きちんと課税すれば、発行した赤字国債に相当するだけの税収を得ることが可能です。